「ヘッド交換式工具は再研磨できない」と思われている理由とは?
最近は工具メーカー様からも発売が多く、実際に現場で使われることも多くなった「ヘッド交換式工具」。しかしそれに合わせて、「ヘッド交換式工具は再研磨できない」と思われているメーカー様や加工業の方々が増えているのを感じます。
ヘッド交換式工具は削り代が短いため、ソリッド式工具と比較すると再研磨できる回数はもちろん制限されます。しかし現場では、そもそも再研磨することができないという認識がされているケースもあり、当社にご相談いただいて初めて「ヘッド交換式工具も再研磨できるんですね!相談してよかったです!」とお声をいただくこともありました。
ここでは、ヘッド交換式工具の概略からチップ交換式工具との違い、メリットデメリットや、なぜヘッド交換式工具が再研磨できないと思われているのか、それを踏まえてヘッド交換式工具の再研磨時のポイントから、実際に当社で行ったヘッド交換式工具の再研磨実績をまとめてご紹介いたします。
ヘッド交換式工具とは?
ヘッド交換式工具とは、その名の通り、刃を交換できる工具のことです。
刃具には、
- 一般的に使用される一体型のもの
- ヘッドとシャンクに分かれてネジ式で締結できるヘッド交換式
- 刃先だけを交換できる刃先交換式
の、大きく3種類があります。どの工具にも特徴があり、上手に使うことで生産性向上やコスト低減に繋がります。
ヘッド交換式のドリルやエンドミルには、必ず専用のホルダーがあります。このホルダーが、ソリッドドリルやソリッドエンドミルのシャンク部分にあたります。
ヘッド交換式の刃物は、ホルダーをマシニングなどの工作機械のツールにセットし、刃先が摩耗した際はヘッドのみを交換するだけでまた使えるので、生産効率がとてもいい工具です。
そのためヘッド交換式工具は、量産ラインなどで使用率は高くなります。一方で再研磨率は低く、再研磨できないと思っている方も少なくありません。
チップ交換式とヘッド交換式の違いとは?
チップ交換式工具は、刃先交換式とも言われていて、刃先であるチップを交換して使用する刃物です。しかし下写真のようなチップは再研磨代がほとんどなく、再研磨できません。
一方、ヘッド交換式はシャンク一体型のソリッドドリルやソリッドエンドミルと比較すると再研磨代は短いですが、ある程度の再研磨代があり再研磨は可能です。
しかし、ヘッド交換式の刃具とネジ部では素材が異なり、その連結部分には空洞になっているものもあります。そのため、深く追い込んだ再研磨はできませんが、深く追い込まなければエンドミル刃裏の再研磨も可能です。
なぜ「ヘッド交換式工具は再研磨できない」と思われているのか
「ヘッド交換式工具は再研磨できない」と思われる方が多く、一度使ったらそのまま廃棄して新品のヘッド交換式工具をメーカー様から購入している、という方も非常に多いと感じています。しかし再研磨ドットコムでは、量産加工を行うメーカー様の方々から定期的にヘッド交換式工具の再研磨依頼を実際に受けており、工具調達費用のコストダウンにつながったというお声も頂いております。
ヘッド交換式工具が再研磨できないと思われているのには、いくつか理由があります。
再研磨時にホルダーが干渉してしまうから
ヘッド交換式エンドミルの再研磨では問題になりませんが、ヘッド交換式ドリルの再研磨の場合、シンニングの再研磨時にホルダーに砥石が干渉することがあります。そして工具メーカー様もホルダーへの干渉を考慮して、ヘッド交換式工具は再研磨が困難としていることが多くなっています。
しかし、砥石が干渉してホルダーが若干削れてしまっても、剛性への影響はほとんどなく、ヘッドの脱着も問題ありません。そのため、ホルダーの一部が研磨されてしまう点のご了承をいただけましたら、ヘッド交換式工具の再研磨を対応させていただいております。
再研磨時にはホルダーが必要
ヘッド交換式の再研磨は、ホルダーにヘッドをセットして、ソリッド品と同じように再研磨します。そのため再研磨時にはヘッドに合ったホルダーが必要になります。
しかし先述の通り、量産性が考慮されたヘッド交換式工具では、ホルダーを工作機械に常時設置しているケースもありますので、ホルダーを再研磨に使用するために外してしまうと、ラインを止めなければいけません。そのため再研磨で対応したい場合、ホルダーの予備が必要になることがございます。
ヘッド交換式工具を再研磨する際の注意点
上記の点も含めて、ヘッド交換式工具を再研磨する際の注意点は下記の通りにまとめられます。
ホルダーへの若干の干渉をお許しください
ヘッド交換式ドリルの再研磨では、シンニングの再研磨時にホルダーに砥石が干渉するケースがあり、ホルダーが若干削れてしまうものがございます。ホルダ剛性への影響はないレベルで、ヘッドの脱着にも問題ない場合に、再研磨可能と判断しております。当社でヘッド交換式工具の再研磨依頼をいただいた際は、どれくらいホルダーに干渉が生じるか、型式や現品を確認させていただき、干渉が想定される場合にはお客様にご説明させていただきます。
再研磨用にもホルダーの確保をお願いします
ヘッド交換式工具の再研磨時には、ヘッドに合ったホルダーが必要となります。そのため、ヘッド交換式工具の再研磨をする際は加工用ホルダーとは別に、再研磨用ホルダーをご準備いただき、ヘッドを一緒に送っていただく必要があります。また、特殊な取り外し工具が付属されておりましたら、一緒に送ってください。
当社にリピートでヘッド交換式工具の再研磨をご依頼いただくお客様の中には、トライアル結果が良好で、ホルダを預けていただくケースもございます。
コーティングや摩耗に合わせたヘッド交換式工具の再研磨をご提案いたします!
注目されているヘッド交換式工具は、各工具メーカー様も刃先の形状を複雑にして加工性を良くする取り組みをしております。そのため、複雑形状のヘッド交換式工具の中にはどうしても再研磨することが困難なものがでてきております。
一方で当社が過去に数多く工具の再研磨をしてきた経験からしますと、刃具形状よりも、コーティングでの対策や、摩耗に合わせた再研磨の方が効果的であるケースもありました。
ヘッド交換式ドリルの中には、とても珍しい底刃の形状のものがあります。この珍しいドリルのヘッドを以前、再研磨依頼を頂き、実施したことがございました。しかし、調整等が膨大にかかり再研磨価格も高くなってしまいました。
一般的な底刃の形状であるスリーレーキのパターンも用意してお客様へ返却し使用してもらったところ、特殊形状もスリーレーキも加工使用限度が同じだったということがありました。
その後、コーティング種違いで新品よりも再研磨品が加工限度数で上回ったということもあり、改めて再研磨とコーティング種の組み合わせの重要性を認識しております。
このように、最終的にはお客様の加工内容や目的によって、どのような工具がいいのかは変動します。当社では、お客様の工具使用環境や目的を丁寧にお伺いした上で、最適な工具再研磨やコーティングのご提案をいたします。
再研磨.comが実際に行った、ヘッド交換式工具の再研磨事例
それでは、実際に当社が行ったヘッド交換式工具の再研磨事例のご紹介です!
先端16mm 超硬 ヘッド交換式4枚刃ラフィングエンドミルの再研磨
こちらは当社で手掛けた、先端16mmのヘッド交換式ラフィングエンドミルの再研磨事例の一つです。
粗削り用のラフィングエンドミルのコーナーはギャッシュを当てた「あたり付き」にしてあります。
先端16mmヘッド交換式不等リード4枚刃エンドミルの再研磨
こちらは当社で手掛けた、ヘッド交換式超硬エンドミルの再研磨事例の一つです。
使用した刃長の分だけ底刃で追い込み再研磨しました。
ヘッド交換式コーナーCエンドミルの再研磨
こちらは当社で手掛けた、ヘッド交換式超硬エンドミルの再研磨事例の一つです。
4枚刃、先端径12mmのコーナーにC1を付けたエンドミルです。
4枚刃ヘッド交換式エンドミルの再研磨
こちらは当社で手掛けた、ヘッド交換式超硬エンドミルの再研磨事例の一つです。
4枚刃、先端径16mmのエンドミルで5mmカットして底刃の再刃付けをしております。
刃先交換式リーディングドリル 再研磨
こちらは当社で手掛けた、面取り用のリーディングドリル再研磨事例の一つです。こちらのリーディングドリルは、刃先交換式となっております。
刃先交換式エンドミルの再研磨事例
こちらはM社製刃先交換式のエンドミルの再研磨事例です。
深さ約5mmの溝加工に使用されており、使用した分の5mmをカットし
底刃を再刃付けしました。
ヘッド交換式リーディングドリル
こちらは当社で手掛けた、ヘッド交換式リーディングドリル再研磨事例の一つです。
3枚刃ヘッド交換式エンドミルの再研磨
こちらは当社で手掛けた、ヘッド交換式超硬エンドミルの再研磨事例の一つです。
3枚刃、先端径20mmのエンドミルで底刃のみを再研磨しております。
ヘッド交換式ドリルの再研磨
こちらは当社で手掛けた、ヘッド交換式ドリルの再研磨です。
ヘッド交換式ラフィングエンドミルの再研磨
こちらは当社で手掛けた、Φ16ヘッド交換式ラフィングエンドミルの再研磨事例の一つです。径の変更不可とのご依頼を頂き、使用部分をカットして再刃付けしました。
このほかにも再研磨.comでは、ドリルやエンドミルの再研磨に関する情報発信を行っております。ぜひご覧ください!
ドリルに関する記事はこちら
>>ドリル寿命の判定方法とは?診断方法、寿命判別式までご紹介!
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【再研磨の匠にしかできない技を、貴社の刃物に】
切削加工会社である当社が、片手間で行う事業ではなく、工具研磨専用の加工設備・検査設備を取りそろえておこなっている、本気の再研磨です。そのため、どこにも負けない品質で工具の再研磨加工を行うことをお約束いたします。当社は、「再研磨の匠にしかできない技を、貴社の刃物に。」を合言葉に、一本一本の再研磨に魂を込め、お客様を“工具”からサポートいたします。
ドリルやエンドミル、リーマなどの切削工具の再研磨を検討されている方は、まずは再研磨.comへお気軽にご相談ください。